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ジオグラフィック フォト
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航空写真家の独り言
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航空写真家は晴れていても、視程の悪い日には撮影できないのです。それは高い所から撮影するわけですか
から、見通せる限りが鮮明に写らなくては航空写真の意味を全く失ってしまうので撮影できないのです。
【◎ 視程 =大気の混濁度を示す尺度。適当に選んだ目標物が見えなくなる距離であらわす。(広辞苑より)】
立ち木やビル、手前の里山が視界を遮るのは自然な現象です。時に視界を遮る霧、霞、もやと言った自然現
象は風流な意味あいもあります。しかしそれが“煙、煤煙、排気ガス”となると風流とは言っておられません。
焚き火一つの煙はたいしたことなくても、秋に稲刈りの終わった盆地で夕方にわら焼きが一斉に行われた場
面を想像してください。煙が無数にたなびき、溜まった煙で見通しがきかなくなります。また、溜まった煙でむ
せて息苦しくなる、これが大気汚染の現実を証明する縮図なのです。
全国に広がる大工場、町工場、鉄道輸送に取って代わったトラック輸送、そしてバス、乗用車の排気ガス、ビ
ルの暖房、農家が地表の保温のために使ったビニールを焼く煙、わら焼き、焚き火、と原因は我々の身近な
ところで幅広い要因があげられます。
トラックを始め車の増え方は激しく、高速道路網の発達と同時に大気汚染は都会、地方の区別なく全国的に
広がっているのが現実なのですが…皆さんお気付きになっていらっしゃいますか?
大手運輸会社がコンテナ専用船を定期航路で運航。島国=日本を取り囲むようにネットされたフェリー航路が
大型トラックやコンテナを大量に積み海上を長距離輸送します。こうした、鉄道輸送に取って代わられたトラッ
クの長距離輸送を減らす努力こそが奇麗な青空、汚染度の少ない大気を取り戻すために必要なことなのです。
宅配便会社がJR貨物と提携し、東京の拠点営業所から最寄の貨物駅まで、大阪の貨物駅から拠点営業所を
トラックで運び、東京⇔大阪間を電気機関車が牽引する環境にやさしい鉄道輸送に任せています。こうした努
力により東京⇔大阪間を走るトラックの数は大幅に減り、排気ガスの減量に大きく結びついているのです。
☆ 煙や排気ガスの混ざったスモッグは主に1,000m〜2,000m位の間に溜まります。皆さんが真上を見上げ、
僅か1,000m〜2,000mのガス層を透かして望む空は……それなりに青く目に映ってしまうのが困ったことな
のです。何故なら…皆さんは青く見える空は汚れているとお感じにならないのではありませんか?。
★ ★ ★ 晴れた日はいつも見え慣れ親しんだ里山、その里山の奥の遠い山並み、
が大気の汚れで見えなくなる。これはとても悲しいことですよね。★ ★ ★
雨が大気中の煙や排気ガス、微粒子を洗い流してくれた後、ある程度の強い風が一定の方向に煙や排気ガ
スを追い払ってくれた時、“本当の青空”が戻ってくるのです。
東京を始め首都圏の四都県が協力し、大型車を始めとしたディゼル車の排気ガス規制強化を国より先行して
実施しました。こうした車社会への規制強化を進める一方で排気ガスを減らし、一度に大量の荷物が運搬でき
る理想的な鉄道輸送の復活こそが現代社会に求められていることではないでしょうか。
イメージした思い通りの美しい航空写真を撮影するには、地域の空港測候所が「視程40km」以上を観測し発
表される日が「撮影チャンス」なのです。
「視程40km」を目安に何日も待ち続けることになります。それだけみんなの大切な青空は汚れているのです。
航空撮影が出来る日の空は、「温室効果ガス」と言われる、二酸化炭素や発癌性物質や二酸化窒素(NOx)と
いった人体に害を及ぼす成分の少ない、地上に暮らす生物にやさしい環境の空といえるのです。
航空撮影の最大の敵は「大気汚染なのだ…」と断言しても決して過言ではありません。その人為的な大気汚
染に負けることなく《天気を待ち続けるのも仕事のうち…》と自らに言い聞かせつつスタンバイが続きます。
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